最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)384号 判決 1955年1月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人伊藤俊郎の上告理由について。
原判決の確定するところによれば、被上告人は醤油醸造業を営んでいるのであるが、多数の使用人を雇入れているため終戦直後極度に野菜の不足に悩んでいたので自家消費用の野菜栽培の目的で本件土地を買受けたものであること、本件土地は被上告人が買受けた当時荒廃しており、植栽せられていた林檎樹も病虫害に侵されているものが多数あつたので被上告人はもと被上告人方の醤油醸造に従事し、農地開墾にも経験のある藤原善太郎に相談した結果、同人を主軸として自家使用人数十名をして林檎樹を整理し、その空地を開墾せしめて、林檎園と農耕地とを約半々づつとしたこと、その後同地上に小屋を建設し、昭和二三年六、七月頃から右藤原善太郎及びその家族を居住せしめ、同人をして本件土地の管理、耕作に当らせていること、即ち右藤原は被上告人の指示した作付計画に基き耕作しこれに要する農器具、肥料農薬、種子等はすべて被上告人が調達し、なお人手不足の場合には被上告人方の使用人を稼働せしめたり、右藤原をして被上告人の計算において他人を雇入れしめ、収穫物は藤原が自家用に消費する若干を除いて全部被上告人が収納し、藤原に対しては給料として初め一ケ月金二百円づつ給していたが、その後漸次増額して昭和二五年頃からは一ケ月金四千円づつ供与しているというのであつて、以上の事実関係にもとずき、原判決が本件土地は、被上告人が藤原善太郎を雇入れ、同人をして耕作に当らせている被上告人の自作地であると認めたのは相当である。
なお、右のごとく藤原善太郎は、本件農地につき耕作の業務を営んでいるものではないとする以上、原判決が、右は、自作農創設特別措置法三条五項二号所定のいわゆる仮装自作地にもあたらないと判断したことは、正当である。論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)